「文系・大卒・30歳以上」がクビになる―大失業時代を生き抜く発想法―
748円(税込)
発売日:2009/10/16
- 新書
- 電子書籍あり
この先3年、何が起きるか。どう備えるか。
派遣切りの次に来るのは、かつてのエリート正社員たち、すなわち「文系・大卒・30歳以上」のホワイトカラーの大リストラである。低成長が続き、就業者総数が減り続けてきたここ十年でも、ホワイトカラーは「本当は必要のない仕事」を作って水ぶくれをし続けてきたからだ。「数年以内にホワイトカラー一〇〇万人がクビになる」大失業時代に何が起きるのか。そしてどう備えるべきなのか。生き残りの処方箋を提示する。
状況を客観的に認識し、根拠のない楽観的な思い込みを捨てよ。
ホワイトカラーの「自己満足」のための仕事が増殖し、会社を蝕んでいる。
彼が見た地獄とその先の光とは――。小説仕立てのシミュレーション。
過去に例のないリストラで社会が負のスパイラルに陥る可能性も。
今のうちに考えておくこと、覚悟しておくべきこと。
主要参考文献
書誌情報
読み仮名 | ブンケイダイソツサンジッサイイジョウガクビニナルダイシツギョウジダイヲイキヌクハッソウホウ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610332-2 |
C-CODE | 0233 |
整理番号 | 332 |
ジャンル | 社会学、実践経営・リーダーシップ |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2011/10/28 |
インタビュー/対談/エッセイ
クビを覚悟で書きました
「こんなタイトルの本の出版は認めない」
本書の原稿を見た、私の上司の第一声です。私が勤務している会社では、本を出版する場合、事前に会社の承認を受けなければならないというルールがあります。そこで、草稿ができたところで上司に持っていったところ、タイトルを見ただけで、本書の出版は却下されてしまいました。
「労働者の雇用不安を大きくするような本を出したら、当社にもクレームがくるかもしれない」
上司は、このように判断したのでしょう。会社への影響を考えれば、出版中止の指示も当然です。私も一度は出版の中止を考えました。
しかし、やはり腑に落ちません。
2009年7月、日本の完全失業率は過去最高の五・七%に達しました。労働者の失業に対する不安は、これまでにないほど大きくなっています。こういう状況ですから、本書を出版したところで労働者の不安が今より大きくなることも、会社にクレームがくることもないでしょう。
むしろ、本書を読めば、雇用不安は小さくなるようにも思います。これまでは経営者も労働者も本書に記した現実(例えば、業績向上に貢献しないホワイトカラーが急増していること)から目を背け、根本的な問題解決を図ろうとはしてきませんでした。現実から逃避し、お茶を濁そうとするから、不安が大きくなるのです。厳しい現実であっても、それを的確にとらえ、問題解決にむけての第一歩を踏み出すことが、雇用不安を解消する唯一の方法だと思うのです。
私は本書を出版することにしました。
上司からは出版の承認を得ていません。本書が書店に並べば、ルールを破って出版したことが上司にばれます。その時点で、私は、本書のタイトルどおり「クビになる」かもしれません。皮肉なことに、本書は、著者である私の雇用不安については最大限にまで高めてしまうものなのです。
しかし、冷静に考えてみれば、安定した職に就いている者が「大失業時代を生き抜く発想法」を論じたところで説得力はありません。本書の著者は、クビになるという雇用不安を抱えているぐらいで丁度良いのです。
いつ失業してもおかしくない立場に我が身をおくと、「世間でも通用する力を磨く」などと悠長なことを言ってはいられなくなります。それでは、失業するかもしれない状況下では、どのようなことを考えればよいのでしょうか。
その答えをまとめたものが本書です。
私の上司が出版を快く承認していたら、本書は、ありきたりな内容になっていたことでしょう。「これを出版すれば、自分はクビになるかもしれない」という不安が、本書の内容に大きな影響を与えました。その意味では、このような不安を抱かせ、大失業時代に正面から向き合う機会を作ってくれた上司に、私は密かに感謝しているのです。
(ふかだ・かずのり 人事コンサルタント)
波 2009年11月号より
蘊蓄倉庫
ホワイトカラーの水ぶくれ
2008年時点で、日本の就業者総数は6385万人。このうち、いわゆる「ホワイトカラー」は2414万人おり、就業者総数に対するホワイトカラーの比率は37.8%になります。10年前の1998年を見ると、就業者総数6514万に対し、ホワイトカラーは2356万人。ホワイトカラー比率は36.2%です。なんと、この10年で就業者総数が130万人も減っているのに、ホワイトカラーは逆に60万人も増えているのです。この数字からだけでも、「派遣切り」も済ませてしまった企業が次に贅肉を絞るとしたら、給料が高い余剰中高年社員、すなわち「文系・大卒・30歳以上」がターゲットになるのが当然であることがわかります。
掲載:2009年10月23日
著者プロフィール
深田和範
フカダ・カズノリ
1962(昭和37)年生まれ。一橋大学社会学部卒。シンクタンク研究員、東証一部上場企業の人事部長、大手コンサルティング会社の経営コンサルタントを経て、2010年に独立。著書に『「文系・大卒・30歳以上」がクビになる』(新潮新書)がある。